夕食の間、俺は一口食べるごとにシェフのおいしい料理がいかに有難いか思い知らされた。
亜紀の弁当が不味いとは思わない。今日のも美味しかった。
けれど、食べなれないものが多いためかシェフが作る料理を食べると何故かホッとする。
それでも亜紀の珍味な弁当には興味がわく。
単なる好奇心なのだろうが。
しかし、シェフの料理はおいしいが何か満たされない。
食欲は人間の欲求だ。これだけの味を堪能しているのにちっとも満たされない。
これもそれも、亜紀のせいだ。
弁当を作り始めてからというもの、亜紀は早寝するのはいいが全く俺を相手しない。
たまには亜紀と一緒に眠りたいと思い早めに寝室へ行くと亜紀の姿がベッドにない。
肝心な亜紀は英紀や沙紀の世話をしに子ども部屋に籠っている。
子守に後は任せればいいのに、ぐずり出す子ども達のそばを離れない。
俺もぐずって泣いてしまうぞ!
亜紀は寂しくないのか?
俺が欲しくないのか?
弁当を作りだしてから俺たちは全く触れていないんだぞ?!



