「今日ここへ亜紀さんを呼んでのには理由があるんだよ。
来週のお披露目パーティの話は聞いたかね?」


「はい、聞きました。」


「英輔との婚約発表の場にするつもりだが、その前に、まだ亜紀さんには英輔からなにも聞かされていないようだね。
そこで、明日からこの家で花嫁修業をしてもらうつもりだから。」


「花嫁修業を?!」


「そう、本当はこの前の正式な婚約の取り決めの後から始めても良かったんだが。英輔が亜紀さんになにも説明せずにまだやっていないというから驚いてね。
取りあえず来週のパーティではお客様の粗相がない程度にレディーになってもらわないとね。」


はぁ・・・パーティのお客に粗相のないように?


私に短期間でレディーなんて無理よ。できっこない。


「だから、それに、婚約パーティの後も花嫁修業があるから亜紀さんにはこの家に住んでもらうつもりだから。」


「ええ?!」


一緒に住む? 家からの通いはダメってこと?


そんな・・・・・それじゃあ 破談にと考えてもそんな私の言い分なんて通らない!


かと言って、英輔のお父さんは大会社の社長だけあって威圧的な態度を取られたら私は為す術がない。


「亜紀さんもそろそろ我が家の嫁としての自覚を持ってもらわないとね。
英輔もしっかり教えてやるんだぞ。亜紀さんは育った環境が違うんだ。お前が手伝ったやれ。」


「わかりました」


ほんとうに家長命令だと嫌な顔一つせずに言うなりなんだ。 けど その顔は無表情に近い。


そこまで嫌わなくても良いのに。それなのに婚姻届にサインをさせる時の気持ちってどうなんだろう?


英輔って虚しくないのかな。愛情のない結婚なんて悲しいよね?