「警戒しないで欲しい。
俺はただ、自分の子が愛おしいだけだ。
他に思惑なんかない。
亜紀をこれ以上傷つけるようなことはしない。」
英輔の必死に説得しようとするその目は私に嘘をついているようには見えなかった。
純粋に父親としてその場に居たいだけなのだろう。
だったらそれを私は拒めない。
ううん、それどころか、嬉しい。
出産のときはとても怖いし不安になる。そこに英輔がいてくれるのは心強い。
願ったり叶ったりだわ。
「分かった。いいよ。
その代りちゃんと父親講座受けてね。」
「ほんとうに?!」
「講座は一緒に受けてくれなきゃダメだから。」
「勿論、一緒に受けるよ!」
さっきまでの寂しそうな表情とは裏腹に嬉しそうな顔をして喜んでいる。
本当に喜んでくれているのだろうか?
そうだと私は嬉しい・・・・
握り締められた手を引き寄せられるとそのまま抱きしめられる。
「ありがとう、亜紀」
そう言うとしばらく抱きしめられた。
けれど、以前のようなキスも抱擁もない。
離婚するのだから当然だけれども。
まるで、私の心に隙間風が吹いているようだった。



