親父が帰った後も亜紀の浮かない表情は続いた。


そんな亜紀を抱きしめた。


「心配しなくてもいい。亜紀がここに居たければずっとここにいていいのだから。」


「ごめんなさい」


亜紀は屋敷へ連れ戻されることを恐れているようだった。


あの屋敷をそれほどに嫌うのはいったい何なのか、藤堂家を継ぐ者として知りたい。


けれど、聞くことで亜紀を不安にさせるのであれば、まだ何も聞かずにいようと心に決めていた。


「亜紀は名前は決めたのか?」


抱きしめる手を緩め、亜紀の頭を撫でてみた。


亜紀の髪をすくい頬を撫でると亜紀の瞳は俺を見つめていた。


「まだ決まらないの。
英輔は考えてみた?」


「一応、考えてみたけど。子供の名前って緊張するんだよな。
だから、なかなか思いつかなくて。」


亜紀も同じだったらしくクスリと笑った。


こんなに名前を考えるのが難しいとは思わなかった。


この子が一生付き合っていく名前なのだ。


この子のためになるような名前にしてやりたい。


藤堂家とは関係なく俺と亜紀の子供が幸せになるような名前を付けたかった。