結婚してください

亜紀専属の看護師田中にすぐさま病院へ連絡させ、準備していた入院用の荷物を持って亜紀を車へと連れて行った。


「大丈夫か？！」


「うん、まだ陣痛の間隔は十分にあるから。」


車に荷物を乗せ、看護師も一緒に付き添ってもらい病院へと向かった。


病院ではすでに受け入れ態勢が整っていた。


特別室へと通されると亜紀をベッドに寝かせた。


病院まで付き添ってもらった専属の看護師は自宅待機させるためいったん病院からマンションへと帰し亜紀の付き添いに俺だけが残った。


不安そうな亜紀の手を握り締め定期的に起こる陣痛で額に流れる汗をタオルで拭いてやった。


「亜紀、苦しいのか？」


「うん・・・・背中を・・・腰を摩って」


陣痛の痛みに苦しむ亜紀の背中を摩りながら亜紀の苦痛が少しでも減るようにと祈ることしかできなかった。


俺はとても無力だと感じた。


こんな時、男は何もできないんだと自分の不甲斐無さに怒りさえ覚えた。


「ごめん、何もできなくて」


「こんなにしてくれてるじゃない。ありがとう」


「背中もっと摩ったほうがいい？」


「陣痛がきたらね」


だんだん間隔が短くなる陣痛に合わせ一晩中俺は亜紀の背中を摩ってやった。


俺にできるのはこれくらいだった。