「英輔の言葉通りもう会うことはないと思うよ。
社交界で会うのは別としてね。

じゃ、英輔と幸せになりなよ。」


「ありがとう」


井澤は亜紀に微笑むとマンションから去っていった。


亜紀は井澤の訪問を悩んだ末に俺に電話をかけてきた。


「珍しいな。亜紀から電話をくれるなんて。」


「今日ね、善道さんがお祝いを言いに来てくれたのよ。」


「井澤善道か?!」


何故、アイツが亜紀のマンションを知っているんだ?!


やっぱり、二人は今も会っていたのか?


「うん。
お幸せにって言ってたわよ。」


「あいつが?」


「2年ぶりに会ったけど、彼、英輔のこと嫉妬深いって呆れていたわよ。
いったい何したの?」


余計なことを・・・


それに嫉妬深いとは何だ?


夫が妻の不貞を心配して当たり前だろ。


そんなの許せるわけないだろ?


「何もしてないよ。兎に角、アイツとはもう会うな。」


「善道さんもそんなこと言ってたわよ。もう、会うことはないだろうってね。」


「そうなのか?」


そんなに簡単に別れられるものなのか?


ああ、そういえば、この二人は好きあっての愛人契約ではなかった。


俺との結婚を嫌がった亜紀が結婚を壊す為に結んだ愛人契約だったはずだ。


ならば、もう、井澤のことは忘れても大丈夫なのか?