「どういうつもりだ?
お前の家はここだろ?」


「マンションへ帰ります。
それから私と離婚をして下さい。
早い方が良いので・・・・」


私がマンションへ行くことを快く思っていないのに、離婚と口走った瞬間英輔の表情が固まった。


そして、手に持っていたグラスを落としてしまう。


落ちたグラスが割れる音がダイニングの部屋の中で響く。


「山崎からヨリを戻そうと連絡でもあったのか!?
だから お前はここを出て行って自由になるというのか?!」


違う! 私を信じてくれない人とは一緒に住めないし、この先一緒にやっていけるわけがない。


それに、どこへ行っても誰もが不倫妻と罵るなんて私には耐えられない。


「ごめんなさい。」


私はそれ以外の言葉を思いつかなかった。 


「山崎の子だと認めるのか? 俺の子じゃなかったのか?」


「ち・・ちがう!!  
この子は山崎の子じゃないわ! 山崎とはそんな関係じゃなかったって言ったでしょう?!」


「それでもお前が愛した男だろ?!」


それを言われると何も言い返す言葉がない。


結局は私には何も言えないのだ。そう、誰もが口にする言葉「不倫妻」これが私なのだから。


だけどこれだけは信じて欲しい。今は山崎より英輔の方が大事なの。だから、これ以上私はここには居られない。


「とにかく、今日、マンションへ戻ります。」


「勝手にしろ!!」


「離婚届け書いたら送りますから」


「俺は絶対に離婚はしない!! 
それだけは覚えておけ!!」



英輔は家の体面があるから離婚に応じないのだ。


それに、家のしきたりで結婚した私たち。祖父の遺言で始まった私たちの結婚話。


まるで結婚ゲームみたいな日々の連続だった。