「病院へはもう行ってきたからいいの。大丈夫だから」


「行ってきた?! 何が大丈夫だよ! 今日倒れたじゃないか!」


「え・・と・・それは単なる貧血で・・・」


私が病院へ行くのを拒んでいると勘違いした英輔は私の顔を刺々しい目で見ていた。


「とにかく明日、病院だ。亜紀、絶対だ。いいな」


そう言うとベッドに押さえつけられて大人しく寝ていろと言わんばかりに布団を掛けられた。


「病気の時は大人しく俺の言うことを聞いてくれ、頼むから。」


はじめて見る懇願する英輔の顔。きっと私の体を心配してくれてるんだよね?


悪い病気にでもかかっていないかと。でも、大丈夫、これは素敵なことなのだから。


私は英輔の手を握り締めると真っ直ぐに英輔の目を見つめて言った。


「私、妊娠してるの。」


「え?」


「英輔の子どもだよ。」


「ほんとうに?」


信じられないという顔をして呆然とする英輔。


私は微笑んで頷いた。 間違いなく英輔の子だから。


私が妊娠していることをやっと理解できたのか英輔の顔が真っ赤になっていた。


こんな英輔見たのは初めてで、英輔もかなり動揺しているのが分かる。


「今、3ヶ月だって。来年の5月下旬頃が予定日だって。」


「ほんとうに 俺の子?」


「他に誰がいるのよ」


「やった!! ありがとう!! 亜紀!」


英輔は顔を赤らめて微笑んでかなり嬉しそうだった。


ベッドに横になる私に抱きついては何度も甘いキスをした。


「え・・・と、俺はどうしたらいい?! その妊娠中って何したらいいんだ?!」


私の妊娠で英輔はかなり興奮して、自分が父親として夫としてどう振舞って良いのか必死に考えていた。


部屋の中を行ったり来たりしては私の顔を覗き込んで質問をしてくる。


まるで大きな子どものようだ。