ベランダへ出ると、亜紀は気持ち良さそうに背伸びをする。
確かに山の空気は気持ち良い。
美味しい空気とはこのことだと身をもって感じる。
「外で食事すると美味いだろうな。
そうだ、夜は外でディナーをしないか?」
「外で? ディナー? 山に来たのだからバーベキューをやらない?」
「バーベキュー? それもいいな。」
「ねえ、やりましょうよ。外でみんなで。」
「サークルの連中も誘いたいのか?」
「ダメ?」
「いや、お前が俺の妻としていてくれたらOKだ。」
「じゃあ OKね。」
珍しい亜紀のおねだりだ。こんな風に笑顔でいつも俺に縋って欲しいと思う。
可愛い妻だとそう思いたい。
ベランダから外を眺める亜紀を後ろから抱きしめた。
初めてのことに亜紀が動揺しているのが分かる。
「亜紀、俺は準備にかかるからお前はバーベキューが始まるまでここで休んでいて。
サークルの友達には俺から連絡を入れておく。」
「ありがとう」
穏やかな時間だ。亜紀とこんな時間を持てるとは思わなかった。
サークルの連中を誘うことがそれほど嬉しかったのか、素直に笑顔で喜ばれると俺まで嬉しくなる。
亜紀の頬にキスをすると俺は部屋を出て行った。
この時の亜紀の顔が真っ赤になるところを見損なったと後になって残念に思った。



