結婚してください


「藤沢愛華のこと良かったの? あんな言い方して。」


「事実を言ったまでだ。俺は最初から愛華に友人以外の感情を持ったことはない。」


多分、亜紀は疑っている。俺と愛華が恋人同士だったということで。


確かに以前はそういう関係もあった。


それはただ、俺にとって気楽な女だったからだ。


「少し疲れただろう。ゆっくりと休むと良い。」


「ありがとう。」


お礼を口にはするが俺の顔を見ない。


無理もないだろう。俺が無理やり連れて来たからな。


亜紀の信用を得るのにどれくらいの期間が必要になるのだろう?


多分、失った信用というのはそう簡単には取り戻せないだろう。


もともと信用すらなかったのかもしれない。俺に対しては・・・・


部屋に戻るとベッドに座らせた。


「大丈夫か?」


部屋に戻ると疲れた表情を表した亜紀。やっぱり無理をしていたのだ。


それほどこの社交の場を嫌うのか? 


大人数が嫌いと言うわけではなさそうだ。昨日のサークルを見ると集団生活は出来ている。


そうするとやはり俺が相手だから亜紀はこうなるのか?


「大丈夫よ。藤堂さんはみんなのところに戻って。」


「俺はお前の夫だぞ。いつまでそんな呼び方するんだ?」


「あ・・・ごめんなさい。」


そう、亜紀はいつも俺を他人扱いにする。俺の妻という自覚はないのだろうか?


結婚前ならまだしも、もう俺たちは入籍後2年過ぎているのにまだ他人行儀だ。


「亜紀、お前を困らせたいわけじゃないんだよ。
顔色が良くない。今日はもう休め。」


「あの・・・外の空気を吸って来ても良い?」


「山崎に会いに行くのか?」


「え?」


亜紀を困らせたくないと言いつつ、そんな嫌がらせを言っていた。


「違う。ベランダから外の空気をと・・・・」


「あ、ああ。そうなのか・・・・ごめん。」


そうだよな、3日間は俺の妻として過ごすんだ。それを承知でここにいるのだから。


俺は何を焦っているんだろう?