男たちは珍しい亜紀の虜にでもなったのか、亜紀から離れようとはしない。
女たちはホストの妻だからと、渋々亜紀に愛想を振りまいている。
亜紀の顔を見るとそれほど疲れた様子には見えない。笑顔で対応してくれていた。
あの時の小娘とはもう違う。亜紀にも少しは余裕が出てきたのか?と思った。
しかし、時折見せる遠い目がそうでないことを俺は気づいた。
「亜紀、少し休もう。」
また逃げられたくない。
少し亜紀を休ませた方が良い。
「なんだ? お前独り占めしたいのか?」
「そうだろう、こんな綺麗な奥方だ。離したくはないだろう。」
男たちの野次が飛ぶ。しかし、案外間違いではない。ここで亜紀を失うわけにはいかない。
「じゃあ、しばらく俺たちは部屋に戻るから。後は好きにしてくれ。」
「客を置いて妻といちゃつくとは、お前がそこまで愛妻家だったとは意外だったよ。」
「そうだよな。てっきり、俺は愛華が」
「おい、奥方の前だぞ。」
「愛華は単なる友人だ。気にしないでくれ。」
俺が愛華を友人と言ったことで、その場の雰囲気が凍りついたようだ。
どんなにパーティで同伴しても、俺と一緒に過ごしていてもあくまで愛華は友人だ。
俺にはそれ以上でもそれ以下でもない。
愛華とはそういう位置づけでしかない。
俺には愛華に対する感情は持ち合わせていない。
俺が今一番欲しいのは亜紀だけだ。
「じゃあ、俺は少し妻と二人で過ごしたいから失礼するよ。」
そう言って亜紀の肩を抱き寄せて部屋へと行く。



