「亜紀? 大丈夫なのか?
少し休もう。控え室まで案内するから。」


「ありがとう」


今日も優しいね。周りの人には仲睦まじい夫婦を演じる必要があるからね。


だから私に優しくなるんだよね。


「あら、亜紀さん、大丈夫なの?」


「え?」


なんで、藤沢愛華がここにいるの?


彼女は藤堂家とは関係のない人でしょう? 英輔が招待したの?


「少し気分悪いみたいだから、控え室に案内しようと思ってね。愛華は向こうで待っててくれないか?」


「ええ、いいわ。じゃあ また後でね。
久しぶりにダンスでも踊りましょう。」


「ああ」


なんだ、私が心配しなくてもそのうちにそうなるんだ、きっとね。だから、何も心配はいらない。このまま時が来るのを待てばいいんだ。


そうだよね、私はあの屋敷で暮らすことはないのだから。


ずっと実家に住んで良いのだから。