もう一度だけ、キミに




「……っ」



分かってる。

あの人が好きなのは、私ではないと。


分かってる。

あの人の心は今も昔も、



“あの子”だけ、なんだと。



私は彼の友人の一人で。

それは変わらない事だけど。



それでもきっと、
彼にとって私は



“あの子”の代わりなんだと




そう思うんだ。




分からない、と言っておきながら。

本当は薄々気付いてた。



彼は、私に触れる度。



私越しに“あの子”を
見ているのでは…と。



でも、私はそれを受け入れたくなくて。
まだ確信出来てないからって、逃げて。



真相を確かめず、
彼の心の中の深いとこに入らずにいる。



曖昧な海の中で居心地のよい
そんな位置にプカプカ浮く、



臆病で卑怯なこんな自分が、どうやってこの恋を掴めるって言うんだろうか?



どうやって―――…




「……ふ…ぅ…っ…」




じわり、歪んで滲む世界を正常に戻そうと、目の上に腕を組んで零れ落ちそうになるそれを抑える。


声を必死で噛み殺し。


誰にもこの、震える
音にならない言葉が届かないように


ぐっ…と心の奥底に沈ませた。