VOICE

「奈々よかったよ!!練習よりもすごいイキイキしてる!」

「観客も釘づけだよ!二幕もこの調子でね!」



「ありがとう!!」
大慌てで舞踏会用の豪華なドレスに着替えながらも、みんなの声にこたえる。




「うっ!」
右足がだいぶ腫れてきていた。痛みをこらえて、無理やりヒールに足をつめる。




この後はストーリーの山場が続く。もう、袖に引っ込んで冷やす時間はない。
「やるしかないのよ…どうにかなる…」




遠くでブザーが鳴る。私はふたたびステージに出た。




二幕はキャピュレット家の舞踏会からスタート。
様々な人との掛け合いの中、母から紹介された婚約者とワルツを舞う。




セリフも全部頭に入ってる、役者たちの動きも把握できている…なのに…、頭がすごくぼーっとして、表情がつくれない。

もう右足にほとんど感覚はなかった。