14歳のジュリエットに突如持ち上がった縁談。
しかし、三日前、橋の上で出会った少年のことが忘れられないジュリエット。


母親から、とにかくキャピレット家主催の舞踏会に参加し、相手の男性を見極めるようにと、言いつけられる。

ジュリエットはしぶしぶ舞踏会へ参加することになる。





舞台は暗転し、スポットが一人の少年を切り抜く。そこにいたのは、凛演じるロミオだった。




男の俺から見ても、気品があるというか、美しいというか…とにかく悔しいくらいかっこよかった。




凛の登場に、一瞬ざわつく客席。
「あれって、相良凛様よね…!」

「このステージに出るなんて聞いてないわ!ビデオを回させないと!!」




その時、凛が口を開いた。
「何で僕がキャピレットの舞踏会に行かなくちゃならないんだ!」




そのセリフだけで十分だった。再び物語の中に観客を引き戻す。




「まぁまぁ、お前が橋の上で出会ったお嬢様。高貴な女性なら、キャピュレットの舞踏会にも来てるかもしれないだろう?」

「ふん、僕は行かないからな!絶対だ!!」





3日前、橋の上で出会った少女のことが忘れられないロミオ。

手がかりを探すために、友人に背中を押されてキャピュレットの舞踏会にもぐりこむことになる。





そこまでで一度幕が下りる。ここでようやく一幕の終了だ。
俺は一気に息をはく。





「ななちゃんのお芝居、ほんと迫力すごいね…。」
隣で佑季も一気に疲れたように、姿勢を崩す。




「奈々もすごいが、即興であれだけのものできる凛もすげえだろ。あいつの肝っ玉はバケモンかよ。」

滉佑もいつの間にか俺の隣にドカッと腰を下ろしていた。

どうやら、遅れて入ってきたせいで後ろで立ち見をしていたらしい。




教養として、ストーリーは知っていても、生で観劇するのは全く違う。
…もう少し、一条宛てのこういう招待状目を通しておくんだったな…




俺は自分の紳士としての未熟さを感じていた。