VOICE

不良たちを軽く蹴とばしながら、相良君が戻ってくる。



「坂上さん、怖い思いさせてごめんね。」
そういって、辛そうな顔で私の前に跪くのはいつもどおりのパーフェクト王子様な相良君だった。




縛られていた縄を全てほどき、相良君はゆっくり起こしてくれる。



「ごめんね、遅くなって…」

「ううん、大丈夫!それより時間は!?」

「あと15分で13時だ。」




私は息をのむ。「急がないと!!」



私は立ち上がろうとした。
「うっ!!」右足に激痛が走る。




見ると、ひどい色に変色して腫れてしまっている。
相良君の視線も私の傷を確認する。



「坂上さん、今だけ僕が触れても大丈夫?」
「えっ?」



私が応える前に、あっという間に相良君は私を横抱きにする。



「きゃ!」

「…坂上さん、まだ震えてる…」



相良君は私の体をいとおしそうに優しく包んでくれた。
「ごめんね…怖い思いをさせたね…。」



肌から伝わるぬくもりに急に安堵がこみあげてくる。

「わ、私…。」涙が眼の端に甦る。その涙をすばやく相良君はぬぐってくれる。




綺麗な琥珀色の瞳で私を見つめると、もう一度優しくぎゅっと抱きしめられる。




「とにかく、今は本番に行こう…大丈夫…全部うまくいくから…」
相良君は私を抱えたままとは思えないスピードで走りだす。



もう少しだけ…このまま…。私は温かい彼のぬくもりに身をゆだねた。