VOICE

「重…いくらなんでも多すぎる…」




しかも抱えた教科書が視界を遮って、あまり前が見えない。
こんな時、本当に身長が欲しくなるから悲しい。




「おや、可愛らしいお嬢様がお困りのようですね…」
柔らかい声が耳元でしたかと思うと、突然両腕の重しがなくなり、遮られてた視界が開ける。



「へ?」




私は抱えてた教科書を持ってくれた人の方を見上げる。優しそうな笑顔に、少し長めの茶髪。とっても大人っぽい男の人……ってオトコ!!!!?





「ひっ!!!!」鳥肌が復活する。




「おや、驚かせてしまったかい?ボクは…」
「ひゃ!!あの失礼します!!!!!さようなら!!!!」
私は突然のオトコの登場に悲鳴をあげて逃げ出した。





「え、ちょっと!!これは!?」




あまりにもびっくりして逃げ出したから、その人の手に教科書を残してきたことにも気がつかず、私は重いのも構わず猛スピードで教室に逃げ帰ってきた。

気が付いたのは、持って帰ってきた教科書をすっかり引き出しとロッカーにしまい終えた時だった。




「あ。」…そういえば、あの人に持たせたままのものどうしよう…

しばらく考えた後、「ま!どうにかなるか!同じ学校だしね。」
こういうのは思い切りが肝心ね。




さて、今日の目的の場所に向かいますか。
ハプニングはあったものの、私は気を取り直して誰もいない教室を出た。





「あの、すみません。演劇部の部室ってどちらですか?」
「あ、それなら、4階の一番奥突き当りですよ。」




「あ!ありがとうございます。」私は通りすがりの女子生徒に場所を確認し、歩き始める。




今日はお休みかもしれないけど、だれかいるかもしれない…できれば、挨拶くらいはしておきたいな…





慣れない校舎に戸惑いながらも私はようやく4階にたどりついた。