それからの私は四六時中お芝居漬けだった。



今までずーっとつきっきりだった一条君と相良君から解放されて、雫と一緒に部室を行ったり来たりする毎日。



なんだかんだ編入してからずっと一緒だった二人と距離があいてしまって、寂しい気も…
「って!そんなことない!!解放されて清々するんだから!!」

「…奈々?いきなりどしたの?」




ハッとする、声に出ていたみたい。
「うん、なんでもない!気にしないで?」




あっという間に、本番前日。
衣装合わせも無事終わり、あとは本番を迎えるだけ。




私は、ほとんど携われていない分、クラスの出し物の準備を手伝いに教室へ戻る。



「坂上さーん!そっちの飾りとってー!」

「はーい!」




私たちのクラスはクレープの販売。
お金持ち学園らしく、当日は有名クレープ店から、特別に商品を仕入れるらしい…

なので、基本的に私たちの仕事は売り子をすることだけ。




当日は手伝えない分、準備は精一杯やろうと走り回る私。

その時“二人”がいないことに気付いた。




「ねえねえ。」隣の女の子に声をかける。




「一条君と相良君見てない?」

「ううん、多分帰っちゃったんじゃないかな?あんまり興味なさそうだったし。」

「そっか…ありがとう。」




実はあの日から、一度も会話をしていない。
…さすがにあんな言い方したら嫌われたかな…。

お昼休みも放課後も一緒に過ごさなかったら、こんなに遠くなっちゃうんだ…




文化祭終わったら、ちゃんと謝ろう…かな…。すごくよくしてもらってたし…




私はよく分からないもやもやを抱えながら、その日は遅くまで作業を続けた。




文化祭はもう明日に迫っている。