VOICE

「くっそ、奈々のやつ…」



俺はイライラしていた。あいつ、ほんとに俺の言うことに素直にはいって言えないのかよ…




「まぁ、あんなこと言われたら主席奪還するまでは坂上さんの嫌がることはできないね。」
凛はカタンとテーブルに腰かける。




「次は何が何でも主席だっつの。今回はちょっと油断してただけだ。」

「一条グル―プの御曹司ともあろう人が、情けないよ僕は。

…と、彼女もいなくなったし、そろそろ本題に入ろうか。」




凛は優しい笑顔をひっこめて、冷たく真剣な表情に変わる。




その声に、離れたところでくつろいでいた佑季と滉佑もテーブルに戻ってくる。




「このところひどくなってるんだ。最初は書置きくらいだったんだけど。」




テーブルに何枚もの落書きが広げられる。

“死ね坂上奈々”“拓海様のストーカー”“最低の男たらし”“チビブス”などなど。
とても見れたものじゃない書置きも数枚あった。




「…とりあえずななちゃんはブスではないかなー。どちらかというと美少女だ。」佑季はのんびりつぶやく。




「靴箱に泥がつめられてたり、坂上さんの教科書に落書きされてたり、まだそれくらいなら僕も処理できるんだけど。

今日坂上さんの靴箱にこれが…」





凛はすっと数枚の写真を出す。
「何だよ、コレ。」




そこに散らばっていたのは奈々の隠し撮り写真だった。

教室での横顔。俺たちと並んで歩く後姿。そして、体育の着替えの際の下着姿まで、そこには映っていた。