ＶＯＩＣＥ

男４人に囲まれる謎の昼休みにも、今ではすっかり慣れてしまっていた。




「それで、俺に頼みってなんだよ。珍しいな、奈々がお願いだなんて。可愛くおねだりしてみな？」

一条君はにやにやと顔を覗き込んでくる。




「うん、あのね。実は…しばらくお昼休み自由に過ごさせてほしいなーなんて？」
私はぺろっと舌を出してみる。



「あ？なんだとコラ。」一気に不機嫌になる一条君。

はい、可愛くごまかす作戦終了。




「ごめん！本番まで練習に集中したいの！！だから！！」

「芝居の練習なら俺が見てやるよ。こう見えてもプロだぜ。」



どーんと胸をはる一条君。




「う、うん。だけどね。せっかくなら本番を見に来てほしいなーなんて…」

私は指をもじもじさせる。



「なんだよ、本番も見に行くし、練習も手伝う。それでいいじゃねえか。」

「それじゃ、意味ないよ！楽しみにしててほしいし…」

「俺の言うとおりにしろよ、お前、オタクだって言いふらすぞ。」




私はバッと顔を上げる。

「ダメ！！大体一条君私より今回成績悪かったじゃん、えらそうに私に命令できる身分じゃないよね？」

「なっ！」一条君が一気にひるむ。




「へぇ…たっくんより成績よかったんだ、ななちゃん。リンちゃんはどうだったの？」

佑季先輩が嬉しそうに聞く。




「僕は理系の主席だよ。でも二人は文系だからね、主席は坂上さん、二番が拓海だった。」

「てめ、凛！何バラしてんだよ！」



ふいっと聞き流しながら、テーブルの片づけをする相良君。



「事実じゃん。これに反省して期末はきちんと勉強するようにって、当主様がおっしゃってたから。」




「ううっ…」珍しく一条君が困ってる。

「ふふっ。」私は小さく笑う。




「おい、奈々。何笑ってる。」

「とーにかく！明日からは私練習するから！私より成績悪いの僻んで、オタクばらしたら

一条君とは二度と口きかないからねっ！じゃ！…相良君美味しい紅茶、ごちそうさま！」




「いえいえ、頑張ってね。」
私は一条君に舌をつきだしたあと、みんなに笑顔で手を振って部屋を後にした。