VOICE

「それはそれは楽しみだね?ドレス着るの?ななちゃん。」

「は、はい!今衣装も作ってもらってて…」



佑季先輩はニコニコと私がご飯を食べるのを眺めている。




「俺も見に行く。新作のインスピレーション湧くかもしんねーし。」

泉先輩もブラックの缶コーヒーをぐびっと飲みながら、言う。




「佑季も滉介も当たり前のようにここに来るな。ここは俺様のすみかだ。」

一条君は不機嫌そうに私の隣で頬杖をついている。




私たちが最初に出会った4階の廃教室。

お昼休みになると決まってここで時間を過ごしていた。
こんなボロボロの部屋には在校生はめったに足を運ばないらしく、格好の隠れ家になってる。




一条君が私を連れ込むようになってからは、相良君が気を利かせてくれたようで、

すっかり整理整頓され、ソファやベッド、ちょっとしたキッチンなども用意されていた。

どうやったのかは、あんまり知りたくない…





「はい、坂上さん。今日はアップルティーだよ、シナモンは大丈夫?」

「うん!大好き!ありがとう!!」




相良君は可愛らしいカップに紅茶を注いでくれる。
無駄のない美しい所作に、本当に彼は執事さんなんだと実感する。



「うん!すごくおいしい!!ありがとう!」
相良君は返事の代わりに、キラキラスマイルを返してくれた。