教室を出ようとしたその時だった。




「坂上さん、教科書運ぶの手伝おうか?多分すごく多いし。」
「あ、2年からのだけじゃなくて、今までの全部だろ?俺らも行くよ!」





クラスメイトの数名の男の子が私の周りを囲む。


「ひっ!」




体中の皮膚全部に鳥肌がたつのを感じた。や、やばい…
「あ!あの!!!結構です!!さようなら!!!!!」




私はやっとのことで、声を絞り出すとクラスメイトの男の子たちを振り払って駆け出した。




残された男の子たちはきょとんとするばかりだった。




「自分の身は自分で守らなきゃ…」
大嫌いな男が近づいてきた気配を察知できないなんて、今のは私が悪いな。

前の学校は男嫌いで有名だったからよかったけど、ここではみんなまだ知らないんだからしっかり警戒しないとね!!





まだ鳥肌の残る肌をさすりつつも、校内に残る男子生徒たちをすさまじい集中力で避けながら職員室へ向かった。




着いてみると、恐ろしい量の教材を前に先生が待っていた。




「坂上さん!こっちよ!…ここにあるの全部あなたのものよ。運ぶの、私も手伝ってあげたいんだけど、今から職員会議が入っていてねぇ。」




「いえ、大丈夫です!時間はあるので何度か往復します。」

「あら、そう。ごめんなさいね、近くの人に手伝ってもらってもいいと思うわ。よろしくね。」
そういうと先生は慌ただしく去って行った。




見下ろすと、恐ろしい量の教材。唇の端をひきつらせながらも、とりあえずかばんに詰められるだけ詰めてみる。




…そりゃ、そうよね。はいるわけないわ。




続いて、用意してあった大きめのトートバッグにさらに残りのものをきれいに詰め込んでいく。




それでもあふれかえってしまうものを両手に抱える。よし!なんとか一回で教室まで運べそう。





私はパンパンの鞄とトートバッグを背負いながら両腕に山盛りの教科書を抱えて、教室への道をゆっくり戻り始めた。