VOICE

演劇部の広い部室に着くと、私たちは早速ジャージに着替えてストレッチを始める。




「ねー?奈々。」
雫が私のストレッチのお手伝いで、背中を押してくれる。




「どうした?雫。」

「奈々は一条拓海と相良凛のどっちと付き合ってんの?」




ガバっと身を起こす私。
「え?なんで?どうして?え?え?」
びっくりしすぎて雫に詰め寄る私。




「え?だって…学校内では常にあの二人がべったりだし…守られてるっていうか…

あたしは別にこんな性格だから、気にせず奈々と過ごしてるけど…」

「付き合ってない!!!から!!」
私は必死で言う。




「まさか、まさか、ありえない、絶対ありえない。3次元の男なんてみんな嫌いよ、やだやだやだ!!」
首がぶっ飛びそうな勢いで振る。



「さ、三次元??とにかく分かった、分かった、落ち着いて!奈々!」
雫に優しくなでられる。



「でも、一条拓海と相良凛って言ったら、私たちの学年のツートップよ?クールな美形と天然王子様。

その二人が一人の女の子に四六時中べったりなんて前代未聞。」




「へ?そうなの?」私は首をかしげた。
うんうんとうなずく雫。




「拓海君は女の子ととっかえひっかえ遊んでるし、凛君は逆にどんな女の子に告白されても受けないって噂。」

「へぇ…。」




「しかも奈々が転校してきてから、拓海君、女遊び控えてるみたいなのよね…。

凛くんも、奈々とは親しくしてるみたいだし、だから…」




そう言ってちらっとこっちを見る雫。
「そ、その辺のことはよく分かんないけど…とにかく!付き合ってませんから!」




雫は観念したように両手を上げる。
「分かりましたー。」
「よろしい。」

「…でも、もし付き合うことになったら一番に報告してね?」
茶目っ気たっぷりにウインクを飛ばす雫。

「もう!雫のアホ!」
ドタバタとじゃれあってると、ふいに部室の扉が開いた。