ＶＯＩＣＥ

「はじめまして。坂上奈々と言います。県立結城高校から編入してきました。分からないことだらけなので、いろいろ力を貸してください…今日からよろしくお願いします！」




私はおずおずとほほ笑みかけて、深く礼をした。




「みなさん、坂上さんも慣れないことだらけで不安だと思うので、フォローしてあげてくださいね。さぁ、席はあちらです。二つ並んで空いている席の前の方ね。」




「はい、ありがとうございます。」先生の案内に従って、私は自分の席に移動した。



「わ、とても可愛らしい方ね？どちらの令嬢かしら？」

「坂上っていったら、あの旧家の名門じゃないか！なんで、この時期に…」

「それにしても、すごく可愛いな…小柄で髪はサラサラだし、しかも色白！」





ひそひそと話す声が何となく耳に入ってくるけど、聞こえないふりをして、席に座る。
見た目のことも、家のことも、あまり言われて嬉しいものじゃない。





クラスを見回すと、どの生徒もきれいな身なりと上品の物腰をしていた。なんというかオーラがあるというか…




前の高校では、ＨＲ中こんな静かなことはなかったな…みんなずーっと私語してたし。



先生の話を流し聞きながら、私はふと１つの空席が目に留まった。




教室の一番端の一番前。出席番号１番のひとだろうか？
始業式からサボりなんて…名門私立にもそんな人いるのね。
そういえば、私の後ろも空席なんだっけ。２人もサボりなんて意外だな…




「では…これで本日のＨＲを終了します。明日から本格的に授業が始まりますので、しっかり気を引き締めてください。」




あ、終わった。





私は、慌てて帰り支度をする。




「坂上さん！」先生に声をかけられる。
「はい！」
「明日から使用する教科書や参考書、職員室前に置いてるから取りに来てね。」




「分かりました、今から行きます。」
私はほとんど空の鞄を持ち、先生の後を追った。