VOICE

その中では、今まさにアフレコの最中だった。



目の前のガラス張りのレコーディングルームには画面いっぱいにどこかで見たことある少女マンガの女の子が口をパクパクさせている…。



中では、一人の女の人がヘッドホンを装着して、台本片手に、マイクへ声を入れている。

あれ、この画面の女の子って…




「あぁ!田中先生!!!」
イコライザーの前に座る監督らしき人が、入ってきた泉先輩を見て目を丸くする。



「うぃっす。お疲れ様です。」
泉先輩はようやく私を下ろしてくれた。



そのまま監督に近寄る。
「今日はどんな感じですか?」

「修学旅行のラストシーンを取ってるんだけど、やっぱりね…ちょっと何かちがうんだよな…」




修学旅行…?ラストシーン?
何かひっかかる。私は改めてその画面に映る可愛い二次元の女の子を見つめる。




「ってええ!!!桃ちゃん!??ってことは、ここ…」

「今更気付いたのかよ。ここ、『恋色ライフ!』の収録現場だぞ。」

一条君が私の心をよんだかのように、教えてくれた。




「はぁあ…」私はあまりの出来事に足の力が抜ける。
「ちょっと、坂上さん大丈夫…?」



びっくりした相良君がやさしく支えてくれる。

「私、もうこの世に未練はない…。」

ガクッと崩れる私。

「ちょっと!!もう!しっかりしてよ、坂上さーん!」