VOICE

「じゃあ、そろそろボクの番だね。」

茶髪のお兄さんが身を乗り出す。佑季先輩…だったよね?




「僕は伊集院佑季。二人と違って長男ではないよ。だから歌舞伎役者でもない。」




伊集院!!そうだ!歌舞伎で有名な一家の性!!




「ふふ…その顔だと知っていてもらえてるみたいだね。ボクは、歌舞伎の方じゃなくて、傘下の芸能事務所の方に携わってるよ、姉が社長なんだ。ふふ。」




伊集院家といえば、歌舞伎が真っ先に思い浮かぶけど、多くのタレントを輩出する芸能事務所としても、有名なところ。




「で、拓海と凛もうちの事務所所属だよ。」「え?」

「拓海は家の関係で顔が出せないから、声優で稼いでるし、凛もモデルとして大活躍中。」

「えぇ!!!」

私は驚いて二人の顔を見る。




「俺が声優やってんのは気づいてたじゃねえか、事務所だって、どう考えても知り合いのところがいいだろ。隠れてやってんだし。」

どうでもよさそうに答える一条君。




「僕を見て、初めに『恭弥様』って叫んだ君は、多分知らないと思うけど、これでも僕ちょっとした有名人なんだよ。」

ふわっと笑う相良君。




言われてみれば、こんなきれいな顔とスタイルを持っていて、遊ばせておく方がもったいないかも。

私はうんうんとうなずく。




「そして…滉佑なんだけど…」私たち4人の視線がずいーっと動く。



私をここまで拉致してきた張本人は何食わぬ顔で外を見ている。佑季先輩があきらめたように口を開く。




「こいつは泉滉佑(イズミコウスケ)。ここまで来たら大体想像つくでしょ?彼は、泉商事の跡取りだね。」
本人の代わりにサラッと紹介を進める佑季先輩。