黒塗りのシートにゆったりもたれかかったまま、美しい黒髪の美少年は口を開いた。




「俺は一条拓海。お前も女なら一条の化粧品とか使ったことあるだろ?」

「え…そりゃ…一番メジャーだし…」

「俺はその一条グループの跡取り息子。本家の長男ってわけだ。」

「えぇえ!!!」



一条ってどこかで聞いたことある名前だと思った…。

一条グループは化粧品の製造・販売で財を築いた大会社で、今や金融や重工業部門にも展開する日本有数の一流企業だ。グループ傘下の会社も数えればキリがない。




「ま。思いっきり遊べるのは高校までだからな、今は好き放題遊んでるってわけ。」

一条グループの御曹司様…どうりで態度がでかいわけだ…
私は納得してしまう。





「坂上さんは、相良家をご存じないですか?」
私の隣にこしかける相良君が訊ねる。




「うーん。きいたことのある名前だけど、具体的には思い出せないんだよね…」
「それはよかった。」

相良君は嬉しそうに笑う。…え?知られてないのが嬉しいの??




「相良家は明治から続く執事の名家です。相良家の執事は主に影のように付き添い、その成功の手助けをすることが仕事です。

いま成功している、大企業の経営者には、ほとんど確実に相良の執事がついていますよ。」





言われてみれば…一番身近な相良って…
「おじい様の秘書の相良さん!!」そうだ、なんで気付かなかったんだろう。





「あぁ…坂上家にも一人いますね…」相良君はかなーり嫌そうな顔をする。どうしたのかな?