目の前のお兄さんのおかげで、完全に注目の的になってしまった私。真っ赤になっているのが自分でもわかる。




「あ?何してんの佑季。こいつは…」

「まぁまぁ、たっくんが気に入るのも分かるよー。すっごく可愛いよね、小さくてふわふわしてるっ。」



ニコニコと覗き込まれる。
四方八方男に囲まれて、私は蛇に睨まれたカエル状態だった…




「ボクは伊集院佑季(イジュウインユキ)。君より一つお兄さんの3年生だよ。よろしくね、奈々ちゃん。」

「え?私の名前…」

「うん?…こうすけから聞いてるよ?君を探してたんだ。」

「…こうすけ…さん?」私は聞き覚えのない名前に耳をかしげる。





「見つけた…」
ふと背後からどす黒いオーラを感じた。
「ひぃ…」私はデジャブを感じながら恐る恐る振り返った。




「やっと見つけたぞ、坂上奈々。…昨日は逃げやがって…」
はい。忘れもしません。真っ赤な髪ときつめの瞳。昨日のヤンキー様です…。





「きゃぁ!」私は腕を掴まれ立たされ、そのまま強制的に引きずられる。

「これ以上遅らせるわけにはいかねえんだよ。おい!拓海、佑季。お前らもだ。」

「あ、あの…私どこに連れて行かれるのでしょう…」

「うっせえ!黙ってついてこい!!」

「ひぃいいい!!」





後ろでは相良くんが大慌てで電話しているのが聞こえる。
「至急だ。5名がそちらに向かう。車と経路の確保をしてくれ。あぁ…あぁ…」





「ねぇたっくん、こうすけがあんなに必死なの初めて見るよ…ボク…」

「俺もだ。とりあえず黙ってついて行った方がよさそうだな…。」
ひそひそと話し合う一条君と伊集院先輩。






皆様。男嫌いの私は、なぜこんなひどい目にあっているのでしょうか?

ずるずるひきずられながら、私は日頃の行いを振り返ってみましたが、特に悪いことをした記憶もありません…。

あぁ、どなたか助けてください…





もちろん私の叫びは誰にも届かなかった。