私はバクバクする心臓を押さえながら校舎を駆け抜けていた。




一体なんなの、あの人たち!?
「恭弥様」の声をもつ黒髪のちょっと怖い人。
「恭弥様」の容姿を持つミルクティー色の髪王子様みたいな人。




…何で??
私恭弥様にあこがれ過ぎて、妄想の夢でも見てるの?





ぐるぐる考え込んでいたせいで、前の人影に全く気付かなかった。
ドンっ
「きゃあ!!!」




走ったままのスピードで人影に体当たりしてしまい、私はしりもちをついた。




「あ?なんだてめえ。」低く響く声にゾクッとした。恐る恐る顔をあげてみる。

「ひぃぃいいッ。」
もう本当にとことんツイてない…。




どうやら私は、最悪な人にぶつかってしまったらしい。
私を見下すその人は、信じられないくらい高い身長と真っ赤に染めたツンツン髪を持つ、いわゆる「ヤンキー」だった。

うん。どこからどう見てもヤンキーだ…




「おい、オレ様にぶつかっといて黙りこくってんじゃねえよ、あぁ?って…お前…」




「すすすすすすみません!!大変申し訳ございませんでしたあ!!!」
私は、涙目になりながら逃げだそうとした。




「ちょっと待て。」逃げようとした腕を掴まれ、強制的に顔を向かされる。




「やっぱりだ。間違いない…。まさか…、こんなとこで見つけるなんて…」
「きゃぁああああ!!!いやぁああああ!!!」
触られた部分にじんましんが出るのを感じる。




私は、必死で振り払い、無我夢中で玄関を飛び出した。




「何でこうなるのぉ…。」私の叫びは夕ぐれの空にむなしく吸い込まれていった。