「夏月?夏月よね!」
「え…?」
「覚えてない?
わたし、水月(みづき)よ!」
「み、水月?」
「久しぶりぃ!
元気だった!?」
川井(かわい)水月は、あたしが中学生の頃の親友。
お姉ちゃんが腕を怪我したことにより転校になったから、それ以来会っていなかったけど。
水月の明るさは、変わっていなかった。
「あ、もしかして夏美ちゃん?」
「そうだよ」
「うわぁ、相変わらず綺麗だな!
お久しぶりです。
わたし、川井水月です。
中学の頃、夏月と仲良かったんです!」
「あら、あなたが?
夏月からよく聞いていたわ」
お姉ちゃんと接点が持ちたくてあたしと親しくする子が多い中。
水月だけは、あたし自身と仲良くなりたくて話しかけてきてくれた子だった。
人見知りだったあたしは、何度も水月の笑顔と明るさに救われたんだよなぁ。
「あ、もし良かったら時間ある?
久しぶりに夏月と話したいなぁ」
後ろにいる子たちは良いの?
そう思って聞いてみると、どうやら丁度別れる予定だったらしい。
あたしは嬉しくなって、大きく頷いた。
「夏月。
体操着と鞄、持って帰ってあげるわ。
お財布は一応持って行きなさい。
お母さんには、私から言っておくから、遅くならないようにね」
自分の体操着をあたしのかのように持つお姉ちゃん。
あたしは遠慮なく体操着と鞄を渡し、水月と一緒に並んで歩き始めた。