「月更彷徨は、確か4組の生徒よ。
地味なのと、声が出ないとかで有名なのよ」
地味…確かに地味だと思う。
だけど、声が出ない?
「何で……」
「さぁ。
ついこの間転入してきたみたいよ。
あんな感じだから友達もいないみたいでね。
詳しいことは、よくわからないわ」
そうなんだ……。
「夏月、早く教室戻りなさいよ」
「そう言うお姉ちゃんこそ戻りなよ」
「私は先生に頼まれたことがあるから、まだ戻らないわ。
それにね」
お姉ちゃんは自分より背の低いあたしの耳元に唇を寄せた。
「私って先生に信頼されているから。
少しぐらいサボッたって、お咎めなしよ」
「信頼……」
「ええ。
その上先生がバレたくないような秘密も持っているからね」
「えっ!?」
それって脅迫ってこと!?
「夏月。
このことは黙っておくのよ、良いわね?」
「……わかった」
黙っておくも何も、あたしにはそういうことを話すような友達いないから。
自分で言うのも何だけど、口も堅い方だし。
しかし、お姉ちゃん怖いわね。
あたしも気をつけなくちゃな。
教室に戻りながら、あたしは考えるのだった。