「中学の時も今と同じように俺と朝陽と琥太郎の好きな子が被ったでしょ?その時、朝陽は俺と琥太郎に遠慮してその子と付き合わなかっただろ?」
「遠慮なんかしてねぇよ。お前らが勝手に誤解してるだけだろ?」
「遠慮してたよ。俺、あの時すごいムカついたんだよね。本当は好きなくせに俺と琥太郎に気を遣うお前の優しさが本当に嫌だった」
「だから気なんて遣ってねぇって言ってんだろ!!あいつは俺のことなんて好きじゃなかった。つーか、むしろあいつには……――」
『あいつ』というのは椿君達が中学時代に好きだった女の子のことだろう。
声を荒げる朝陽に椿君がフッと笑う。
「だったら、今回は如月さんを俺に譲ってよ」
「愛音は物じゃねぇんだよ。そんなに簡単に譲ったりできるわけねぇだろ」
目の前で言い争う二人の間に割って入ることができない。
あたしはただただ二人を見つめてオロオロしていた。



