「らしいね」 椿君はふっと笑うと、スタスタとこちらに歩みを進めてきた。 そして、あたしの横を通り過ぎようとした時、右手であたしの手のひらを掴んだ。 「えっ……?」 「如月さん、隙ありすぎ。俺、奪っちゃうかもよ?」 椿君はニコッと笑うと、あたしの手を離してヒラヒラと後ろ向きに手を振って歩き出した。 「あいつ……」 その背中を朝陽はジッと目で追い続けた。