舞台裏の大道具や小道具が置かれている場所までくると、椿君は台本を手に最終リハーサルを始めた。
「あー、セリフ全然覚えられてない。ヤバい、今覚えないと」
ブツブツと独り言をいいながらも流れを体に叩き込む椿君。
真剣な表情の椿君にくぎ付けになる。
あたしはといえば、王子様にキスされて目が覚ますぐらいしかやることはない。
一言二言セリフはあるものの、王子様役の椿君の方が役割が大きい。
「えっと、じゃあ、キスシーンの練習してもいい?」
「あっ……うん……」
うなづいてみたものの、どうしたらいいのか分からない。



