みんなの視線が一斉に椿君に向いたことで、あたしはホッと胸を撫で下ろした。
すると、隣にいた椿君がニコッとあたしに笑いかけた。
「如月さん、すごい似合ってるね」
「そんなことないよ。椿君の方が似合ってるよ。本物の王子様みたいにカッコいいよ?」
端正でどこか中世的な顔立ちの椿君はまるで本物の王子様みたいだった。
みんながキャーキャー言うのも無理はない。
すると、椿君がふいにあたしの耳元に唇を寄せて囁いた。
「ちょっとついてきて。劇の最終リハーサルをしたいから」
「っ……」
耳元にかかる椿君の吐息がくすぐったくて思わず首をすくめる。
何だか最近、椿君との距離が近い気がする……――。
「そんな可愛い反応されると、理性がきかなくなっちゃうかも」
椿君はポツリとそう呟くと、「ついてきて」と言って歩き出した。



