「……そうだよな。
お前は心ん中だけじゃ分からないよな」
気にするなと言った秦
「あぁ。」
だから俺は気にしなかった。
「んじゃ、俺はアズサちゃんの所行ってくるねん」
さっきまでの重い空気を取り払って、いつも通りに戻った秦は女の所へ行った。
「女遊びも程々にしろよ。
いつか刺されるぞ。」
「大丈夫よーん。それに、これは俺の仕事だしぃー?」
まぁ、女遊びもこいつの"仕事"だ。
それはまた今度説明するとしてーーー
「組長、傷は浅い内が良い。
お互い傷ついたら、それこそお終いだ。
今ならきっと、まだ間に合う。」
部屋から出る間際、こいつが言った言葉を俺は気にしなかった。
こいつの忠告を、聞かなかった。
思えばこいつの言葉は、いつも当たっていた。
主語のない忠告を、聞いとけば良かったと後悔するのは
この後すぐの事だった。


