「行方不明だったみーが見つかって、俺はすぐに迎えに行こうとした。
だけど、秦に言われたんだ。
"お互いに、気持ちの整理をする時間が必要だ"と。
だから、俺は迎えに行くのを止めた。」
「止めちゃったんですか?」
「あぁ。それから、そいつん家に電話してみーを預ける事にした。
あいつ……男性恐怖症になっていたんだ。俺たちの前でそんな素振りなんて全く見せなかったのに。
男を見ただけで、過呼吸になる位の重症だった。」
「……でも、今は治ってますよね?」
本当に、後悔している雅さん。
シュンとしている犬に見える。
「いや…治ってない。
知らない男と密室になった時過呼吸になる。
だけど、彼氏が居ると全然平気らしい。」
忌々しそうに、今度はイライラし出した雅さん。
こんなに感情を分かりやすく見せてくれる事に、驚く。
「…あのガキの話は良い。
みーが戻って来たのは昨年だ。
迎えに行って、あいつは俺を許してくれた。
だから…今は普通に暮らしているんだ。
本当に、あいつは優しい。」
今までで一番穏やかな顔の雅さん。
本当に、未衣ちゃんの事が大好きなんだと分かる。
「そうですね。未衣ちゃんはとても良い子だと思います。」
「だけど、秦に言われたんだよ。
"そろそろ、前を向け"って。」
「はい。」
また、真剣な表情に戻った。
座り直して、私と雅さんは向き直る。


