「邪魔する。」
「今飲み物入れますね。コーヒーで良いですか?」
「気にするな。お前も座れ。」
「し、失礼します……」
私の部屋な筈なのに、何故かお客になった気分だ。
それはきっと、この部屋を作った本人である雅さんが我が物顔でソファに座っているから。
雅さんの目の前に腰を掛ける。
緊張、する。
そんなに軽い話の内容ではないのだろう。
雅さんは口を開こうとしたり、考えたり、難しい顔をしている。
「お前、さっきのファーストキスか?」
……やっと口を開いたと思ったら、まさかの質問だった。
「……はぃ」
思い出して、顔がまた赤くなる。
「そうか……すまなかったな。」
驚いたような顔をした後、申し訳なさそうに眉を下げて謝る雅さん。
「あ、いえ……大丈夫、です……」
怒る気も、失せてしまった。
「なぁ、バカ女。」
「はい」
すぐにいつもの無表情に戻った雅さんは、真剣な眼差し。
「俺は昔から、自分の事に疎いらしい。
自分で、自分の気持ちがハッキリ分からないんだ。」
「……分からない?」
「他人の気持ちにはすぐに気づける。
だが、自分が相手にどんな感情を抱いているのか。
秦に言われないと気づけない。」
「そ、なんですか……」
じゃあ、未衣ちゃんの時はどうなんですか?
言いそうになったのを、ぐっと飲み込んだ。
「だから、お前が俺の事を好きだなんて気づいている。」
「…………」
私の目を見て、ハッキリ言った雅さん。
その漆黒の瞳に、吸い込まれそうになる。
……てか、普通はそう言うの本人に言わなくないか?
知っていても言わないよね!?
気まづいだけじゃん!


