「あの女の言ってる事は信じるな。
こっちが真実だ。
元々あの女の我儘を叶えてやっただけで、勝手に勘違いしてるだけだ。」
「いやぁ、一人娘だからと思って少し甘やかし過ぎてたみたいでねぇ。
悪い子じゃないんだが、少し我儘なんだ。許してやってくれるか?嬢ちゃん。」
「あ、はい……」
許すも何も、何もされてないので。
「んじゃ、俺も帰るか。」
「私も行く。」
立ち上がった辰吉さんを見送る為に未衣ちゃんも立ち上がる。
「あ、私も行きます!」
「お嬢にも話があるから、嬢ちゃんは気にしなくて大丈夫さ。
組長の女に見送りなんてされる程、俺ぁ偉くないからな」
ハハっと豪快に笑う辰吉さんの背中を押して、さっさと出て行ってしまった二人。
「………」
「………」
本日二回目の、雅さんと二人きり。
私は、さっきのキスの事が頭から離れなくて会話どころではない。
……けど、聞かないわけにもいかない。
「み、雅さん……」
「あ?」
ひっ……少し機嫌が悪い……
好きでもない私とキスなんてして、きっと気分が悪いのかもしれないけど……
雅さんからしたのだから、私は悪くない。
それに、ファーストキスをあんな形で奪われて少しだけショックだ。
せめて、二人きりが良かった。
「……なぁ、バカ女。」
「は、はい……」
バカ女に戻った。
心の中で肩を落とす。
「話を…聞いてくれるか?」
「へっ?話…ですか?」
「あぁ、話。」
「私で良ければ是非!」
雅さんと話せる!
しかも、"雅さんの話"が聞ける!
頼られた事がすごく嬉しかった。
「くくっ……お前の部屋、行っても良いか?」
「え、あ、どうぞどうぞ!」
少し機嫌の直った雅さんと、私の部屋に移動した。


