「え、やだ。
なぁちゃん送るので忙しいし。」
「未衣様と一緒なら何処までも行きますわ!」
…って言いながら、私と奈美を未衣ちゃんにばれないように睨んでいる。
「篠原に今、辰吉も来ている。
後で行くから先に行って待ってろ。
組員には話を通してある。」
辰吉……って誰だろう。
私が住み始めて、初めてのお客さんだ。
「辰吉さんは、あのブスの父親ね。」
不思議に思ってたら、私と奈美に耳打ちで教えてくれた秦さん。
「縁談が決まったんですのね!
わかりましたわ。先に行って待ってます。」
ふふん、と勝ち誇った笑みを浮かべて爽々と離れて停まっていた別の車に乗って行ってしまった愛美さん。
「…………」
雅さん…結婚、するんだ……
私、篠原組でお世話になるわけにはいかないよね
「じゃ、二人とも車に乗って乗って。
奈美ちゃん送るよ。」
呆然としている私と、プルプルと震えている奈美を車に押し込んだ秦さん。
「ちょっと未衣!秦さん!
雅さんがあのビッチと結婚したら、雪はどうなるのよ!?」
どうやら、怒りで震えていたらしい。


