路駐してあった、いつもの車が見えてくるとタイミング良く秦さんが降りて来て
「さ、乗って乗って。」
何故かいつもよりご機嫌だった。
「出せ。」
車に乗ると未衣ちゃんも待っていて、迷わず先に乗った雅さん。
未衣ちゃんの隣は雅さんで、雅さんの隣が私。
いつもより少し狭い車内に、雅さんとの距離が近くなった。
「未衣、あのブスといつ仲良くなったんだ?」
雅さんを見ている私は気づいてしまう。
「んー、この間あそこ行った時に何か気に入られてずっとベッタリ。
あの臭い香水移るから困るんだよねー。」
雅さんが、そんな世間話のような話をするのは未衣ちゃんだけ。
「ちっ…未衣に迷惑かけやがって。
帰ったらシャワーをすぐに浴びろよ?
確かにあのブスの香水の臭いがする。」
「はぁい。」
自分から話題を振るのも、自分から話しかけるのも、優しく相手の意見を取り入れて話すのも、未衣ちゃんだけ。
「未衣に迷惑掛ける女なんかと結婚なんてするか。
…ブスとの縁談は近いうちに破棄する。秦。」
「はいはーい。了解。
今日中に断りの電話入れておくわ。」
……雅さんが物事を考える中心に居るのは、いつも未衣ちゃん。
未衣ちゃん中心に世界が回ってる雅さんさブレる事がない。
ほぼ確定していた縁談さえも無しにしてしまうくらい。
でも、それに安心する自分も居る。


