白雪姫と組長様


元々、夜の繁華街なんて私には場違いなんだ。


ヤクザの一番偉い雅さんと、ただの女子大生の私。


カッコイイ雅さんと、平凡な私。


並んで歩いていて、釣り合う訳がない。


それに、


「雅さん、お勤めご苦労様です!」

「雅さん、お疲れ様ッス!」

「雅さん、最近クラブに来てないっすけど どうされました?」

「雅さん、ウチに可愛い女入ったんです!どうですか?」



雅さんが通るだけで、頭を下げて挨拶をする男の人達。


それだけで、雅さんは遠い存在なんだと気づかされる。


いや、元から分かっていた筈だけど、認めたくなかったのかもしれない。


隣を歩いている雅さんは、馴れているのか無視をして平然と歩いている。


隣に居る筈の雅さんは……手の届かない程、遠い人に思える。


何故か、無性に泣きたくなった。


手の届かない距離に居る雅さんは、未衣ちゃんの事が好き。


好きだけど、愛美さんと結婚する。


私は、どんなに頑張っても手に入らない。


やっぱり、諦めた方が良かったのかもしれない。


でも、ここまで育ってしまったこの想いは、そう簡単に消えてくれない。