緊張しすぎて、顔が上げれないでいる。
視界に入るのは、自分の足と雅さんの黒革の靴。
もうっ、なんで二人とも行っちゃったの!
「……バカ女。」
「は、ははいっ!」
「くくっ…噛みすぎだ。
そんなに緊張すんな。」
不意に、雅さんに声を掛けられ噛んでしまった。……のを、笑う雅さん。
何だか、雅さんが笑っているのを見ると私も嬉しくなる。
なんだろ…こう、心が満たされる。
「俺たちも行くか。」
「あ、はい……」
ふと、私の頭の中に不安がよぎった。
「あ、あの、雅さん……」
「あ?なんだ。」
「もしかして…繁華街歩きます?」
「……あ?当たり前だろ。」
何言ってやがる、みたいな顔をする雅さん。 ごもっともです。
「み、雅さんは先に車に行っていて下さい。私は後から追うんで。」
だって、夜の街になりつつある繁華街を雅さんと並んで歩いたら……
想像するだけで恐ろしい。


