何より、


「未衣様っ!」



愛美さんが上機嫌になった。


雅さんを呼び捨てにしていた彼女は、未衣ちゃんを何故か様付けで呼んでいる。


…様ってさ、呼び捨てよりランクアップしてるよね。


雅さんに目もくれず、後ろから来た未衣ちゃんまで走って飛びついてるし……


彼女にとって、未衣ちゃんの方が雅さんより上?


「きゃっ!
飛びつくなって何回言ったら分かるの、愛美。」


勢いよく飛びついた愛美さんを受け止められずに倒れそうになる未衣ちゃんを、後ろから支えた秦さん。


「未衣様がこの時間にここに居るなんて珍しいですわね!
私、未衣様に会えて嬉しいですわ!」


……あれ、さっきまでの高圧的な態度が消えてる。


てか、雅さんはタメだったのに未衣ちゃんには敬語?


すごい笑顔だし……


え、ちょ…誰か状況説明して!


「あの、秦さん……」


「あ、雪ちゃん。本当にごめんね?」


秦さんの所に行くと、愛美さんを睨んでた。


背筋が凍る程冷たい目で……