「なに無視してんのよ!」


「いや…無視してたつもりはないんですけど……」


秦さん、何処に居るのかな。


「あんた生意気なのよ!
雅と結婚するのは私なの!
さっさと出て行きなさいよ!」


「えっ………」


雅さんが…結婚……?


「おい愛美、まだ決まっていない事を口にするな。」


決まってはないけど、いずれはするって事…?


雅さんは、未衣ちゃんが好きなんじゃないの?


「でも雅、縁談はほぼ確定しているでしょ?」


「………」


無言の肯定。


「分かった?
だからあんたは邪魔なの。
どうせ襲われそうになったのだって、雅の気を引く演技でしょ。
一般人なんかが雅と一緒になれる訳ないのよ。」


「………っ」


高圧的な態度のこの人に、負けそうになる。



何も言い返せないで唇を噛んでいると


「愛美、何してる。」


「雪ちゃん、向かえに行けなくてごめんね?」


救世主が来た。


スーツを着た未衣ちゃんと、秦さん。


呼び捨てな辺り、未衣ちゃんも女の人…愛美さん?を知っているらしい。


秦さんは愛美さんを見た瞬間、「まだ居たのかよ…」と分かりやすく顔を歪めた。