「雪ちゃんゴメンね?
二人ともお疲れ様。さ、乗って乗って。」


「どうもこんにちは、秦さん。
雪の事を放って女と何してたんですか?」


刺々しい奈美に、苦笑する秦さん。


確かに、秦さんから仄かに女物の少しキツイ香水の匂いがする。


いつもの秦さんのアクアマリンの香水ではない。



「あー、仕事だよ仕事。
それより奈美ちゃん、眉間の皺が残っちゃうよ?」


可愛い顔が台無しだ、って話を上手くはぐらかした秦さん。


「ふーん…そうですか。」


奈美は納得してないみたいだけど、私は秦さんのプライベートについて口は出せない。


…むしろ彼女さんに悪いと思ってしまう。
だって、自分の彼氏が他の女を送り迎えしてるんだよ?
いくら仕事とは言え。


奈美と別れて、車に乗る。


「……秦さん、すいません。」


「え、何が?」


本当に何の話か分かってないらしい。