それは知ってるんだけどさー


「……もう、帰っちゃって良いかな?」


講義は終わって、あとは秦さんが向かえに来るだけなんだけど、返信が来ない。


仕事が忙しいから、一人で電車で帰ろうとしたら奈美に止められた。


「あんたねぇ、もう少し危機感を持ちなさい!危機感を!」


「……何故二回も」


「大切な事は二回言うのよ!アホたれ!
あんたは命狙われてて、それを守ってもらってるんだから大人しく待つ!
良いわね!?」


「………」


「返事は?」


「はい!」


「よろしい」


相変わらず、女王様は健在で。


奈美はまた、パンフレットに目を移した。


怒り口調だけど、秦さんの事を黙って一緒に待ってくれる奈美の優しさ。


「ふふふっ」


「なにあんた…頭大丈夫?
突然ニヤケだして」


「奈美は優しいなぁーって。」


「キモッ。」


照れてるのか、パンフレットで顔を隠した奈美。


ツンデレー。


「ほら、その緩んだ顔隠しなさい。
キモいったらありゃしない。」