雅の側近をしていて、お嬢のお世話係をしている俺。
二人に最も近い場所に居た俺。
近くに居たのに、二人の変化に気付けなかった。
情けない。
あの時、自分がどれほど無力なのか思い知らされた。
思い出しただけで、襲ってくるのは後悔と悔しさだけ。
「………」
「だから、俺はやっと修復出来た二人の関係に口を挟んで欲しくないんだよ……」
自嘲笑をしながら言う俺に、彼女は…雪ちゃんは言った。
「……笑いません。
全然、可笑しくなんてないです。」
芯のある、力強い声で。
普段か弱い小動物に見える彼女が、今は何故だかとても大きく見える。
「………」
「確かに、さっきはついカッとなって未衣ちゃんにあんな事言っちゃったけど……薄々は気づいてました。
それに、14も違う雅さんに恋した私も
17も違う未衣ちゃんに恋した雅さんも
変わりません。」
何故か、俺たちには無い純粋さを持つ彼女が羨ましくなった。
そんな言葉で解決出来てしまう彼女を羨ましいと思った。


