「まぁ、基本的に組長とお嬢をここで見る事は食事以外でないから安心していいよ。」
「え、なんでですか?」
雅さんは仕事で忙しそうだから、会えないかもって思ってたけど……未衣ちゃんも?
「……雪ちゃんは気にしなくていいから。
組長もお嬢も、朝と夜の食事と寝る時以外家に居ないから。」
「……はい。」
お前には関係ない。
遠回しに、そう言われた気がした。
まぁ、たかが居候の私に重要な事なんて教えてくれないよね。
「着いたよ。
風呂は早めに入ってくれると助かるかな。
俺も組長の仕事に着いて行って家に居ない事が多いから、分かんない事あったら組員に聞けば分かるから。」
少し冷たくなった秦さんは、それだけ言うと歩いて来た方向に戻って行ってしまった。
部屋に入って、ふぅ…と一息つく。
「……お風呂に入ろうかな」
下着と部屋着とバスタオルと洗面用具を持って、部屋を出る。
ダイニングの近くだから、自分の記憶を頼りに洗面所へ向かう。
洗面所に行く途中、すれ違った組員さんが挨拶してくれたのが嬉しかった。
……バカ女さんは定着してるみたいだけど。


