「あ、はい。お願いします。」
「帰りは仕事で無理そうなんだ。
悪いけどタクシーで帰ってもらえる?
お金渡すから。」
仕事大変なんだ……
「い、いえ。
電車で帰ります!」
「それはダメ。
雪ちゃんは一応狙われてるんだから。
タクシーで帰ってね。奈美ちゃんも。」
「……わかりました。」
「ありがとうございます。」
「それと、あまり遅くならないように。」
なんか秦さん、お父さんみたい。
それからも気をつけてとか注意事項を沢山説明してる秦さん。
それを聞いていたら
「……行ってみたいな……」
未衣ちゃんが、窓際に頬杖をついて外を見つめながらポツリと呟いた。
その姿は儚くて…触れたら消えそうに思えた。
「……未衣、雅と今度行っておいで。」
話しかけにくい雰囲気だったので、私と奈美は口を噤んだ。
代わりに答えたのは、悲しそうな表情の秦さん。
「……行きたいけど行きたくない。」
「雅としか、もう行けないでしょ?」
「……羨ましいだけだもん。
暫く休みないし別にいいし。」
「時間作ってあげるから。」
「……別に行きたくない。」
「……そ。」
黄昏てる未衣ちゃんに、悲しそうに顔を歪めてる秦さん。
車の空気は重く、部外者の私達が口を挟める空気ではなかった。
ライタウンに何か思入れがあるらしい未衣ちゃん。
昔なにかあったのかな?


